50歳で早期退職し、セミリタイア!

私セイルは50歳で早期退職、セミリタイアしました!その思いを綴ります。

働く意思を持たないことは犯罪なのか(軽犯罪法1条4号)

 軽犯罪法という、立小便などの軽い罪を定めた法律があり、その中の条文の一つに次のものがあります。

軽犯罪法第1条 - Wikibooks

第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

4 生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの

 この条文は、リタイア者に適用され得るものなのか?ということを考えてみます。

目次

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 《東京都八王子市》

この条文でリタイア者が逮捕されることは無いと思う

 結論から言えば、この条文によって、リタイア者が逮捕・起訴されるようなことは無いと思います。

  「働く能力がありながら職業に就く意思を有せず」 の表現がなかなかドンピシャなので、「働かないとアウトなのか?」と一瞬思ってしまいますが、他にも複数の要件が述べられていて、それらを同時に満たさないと、この罪には該当しないからです。

  • 生計の途がない
  • 働く能力がありながら職業に就く意思を有せず
  • 一定の住居を持たない
  • 諸方をうろついた

 リタイア者は、ある程度の資産があるから「生計の途が無い」というのは違うし、持ち家だろうが賃貸だろうがホテル暮らしだろうが、屋根のある住居に身を構えており、「一定の住居を持たない」も満たさない。

 だから、仮に警察に職務質問を受けても、「どこそこに住んでいる」ということが説明できれば、この条文で逮捕されることは無さそうです。

戦前の「浮浪罪」の後継が、この罪らしい

 それでは、上記の条文を全て満たすのは、どういうケースなのか?どうも「浮浪者」を想定しているっぽいな、と思ったら案の定でした。

浮浪罪 - Wikipedia

浮浪罪(ふろうざい)は、日本の内務省警察犯処罰令第1条第3号に規定されていた刑法犯の通称、俗称である。

(略)

なお警察犯処罰令は、1948年(昭和23年)、軽犯罪法の施行と伴に廃止された。軽犯罪法第1条第4号に浮浪罪相当の処罰規定が現存するものの、刑罰は拘留又は科料と軽罰となっている。

 戦前は、「内務省警察犯処罰令第1条第3号」というものに規定された、いわゆる浮浪を戒める法令だったようですが、規定内容が曖昧であるため、警察が人をしょっ引くのに都合が良く、濫用されたみたいです。

 戦後、人々を浮浪者と認定してどんどん逮捕するやり方はいけないよね、ということで、もっと適用条件を厳格にし、刑罰を軽くし、軽犯罪法に組み入れたのが、冒頭の条文のようです。更に同法第4条では次のように釘をさしています。

軽犯罪法第4条 - Wikibooks

この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。

 だから、特に人に迷惑をかけている訳でもない人を、正職が無いからといって、どんどん検挙するなんてことはしないわけです。

「諸方をうろつく」については注意が必要

 では、この条文が死文なのか、というとそうでもなく、逮捕に至るケースもごくまれにあるそうです。

浮浪罪 -「寅さんのような生き方」は法に触れるか? | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 このように、浮浪を禁止する理由が必ずしも明確でないことが影響しているのか、実際に浮浪罪が適用され、検挙されるケースは極めて少ない。しかし、ゼロではない。2007年に奈良県のパチンコ店駐車場で、浮浪の疑いにより男性が現行犯逮捕された。その後、この男性の尿から違法薬物の陽性反応が出たとして、覚せい剤取締法違反でも再逮捕され、有罪判決を受けたのだ。

 しかし、二審では逆転の無罪判決が示された。それは、被告人の車の中に求人情報誌やハローワークの求人票写しが見つかっており、職業に就く意思があったと判断されたからだ。

 まぁ、このケースは、恐らく、見るからに怪しかったか、常習性があったか、薬物絡みということで、逮捕まで至ってしまったのだと思いますが、とにかく、あの条文が死文でないことを裏付けています。

 最近はまず見かけないですが(路上生活の方も、服装・身なりをちゃんとしていらっしゃるので)、私が子供の頃、いかにも、あの4要件を全て満たしそうな人、ごくたまに街中で見かけました。もちろん、本当に要件を満たしているか調査しているわけではないですが、「見ただけで分かる」。確かに、あぁいう人が「諸方をうろついて」いたら、みんな不安がるから、あのような条文があるのも仕方が無いんだろうな。

 だから、警官が、「諸方をうろついて」いる人に職務質問するのも、この軽犯罪法の規程と無関係ではないような。

 逮捕されることは無いとはいえ、平日の真昼間に、清潔とは言えない格好で、「諸方をぶらつく」ことを高頻度で行うようなことはしない方が、変な誤解を招かないだろうということは言えそうです。

 ちなみに、私はリタイア後、一度も警官から声をかけられたことはありません。そんな出歩かない、ということもありますが。

 

★初めてお越しの方へ。以下にて私のセミリタイアの概要をまとめてあります。
 ⇒50歳でセミリタイア達成!その概要を書きます