資産運用の失敗記事というのは、私がセミリタイアを志した10年前ぐらいには既に存在していました。しかし最近はその需要が高まってきたからなのでしょうか、かなり無理のあるものも散見されます。例えば次の記事です。
記事について
記事の概要は次の通り。主人公は、リタイア者の下野さん(仮名)です。
- 前職 :元不動産デベロッパー、年収1000万円超
- 居住地 :賃料25万、首都圏近郊、築20年の1LDKタワマン
- 家族 :娘は結婚、現在妻と二人暮らし。妻も無職。
- 退職年齢:現在55歳なので、それ以前。
- 退職金 :2000万円
- 他の預貯金:後述の事件の時点で1000万円
- 投資 :記事には出てこないので、多分していない
家賃25万円という額が、退職金・預貯金の額に全然見合っておらず、これだけで非常に香ばしい記事であることが容易に想像できます。
さて、下野さんにはある事件が降りかかります。彼の亡父が連帯保証人だった関係で、いきなり1500万円を払わされることになってしまったのです。
1500万円を払った結果、残りの資産は、預貯金1000万+退職金2000万=3000万円となり、・・・これでは暮らしていけない・・・・。
確かにそうではあるのだが、もう少し計算してみます。
1500万を払う直前は3000万+1500万=4500万ありました。これは家賃15年分に相当する額です(25万×12か月×15年=4500万)。
つまり、仮にこの事件が無かったとしても、あと15年分の家賃しかありません。この事件は55歳より前に起こったものですから、家賃だけで70歳までに資産が尽きる計算です。
そりゃ1500万の出費は痛いだろうけど、そのことが無かったら、家賃25万のタワマンに一生住むつもりだったの? 年金を全て家賃につぎ込んでも足りないじゃないですか。
そもそも現役時代、年収1000万円超とはいえ、手取りは800万円くらいだったはず。そこから家賃だけで年300万捻出してたの?
記事には専門家と称する者の指摘として、
“明暗を分けるもっと大きなポイントは、お金を計画的にコントロールしているか否かにあるといえます。
意外なことに、収入が少なくても生活を切り詰めながらやりくりできていた人は、定年後もあまり困窮しません。逆に、現役時代に年収が1,000万円を超え、生活が派手だった人ほど貧乏定年になりやすいのです。
彼らは節約とは無縁の暮らしを送ってきました。定年後に収入がガクンと下がっても、おいそれとはギャップに対応できません。いままでと同じようにお金を使いまくっていたら、毎月大赤字になって当然です。”
とあるのですが、この件の場合、「お金を計画的にコントロール・・・」以前の話だろ。
これは、長尾義弘・中島典子『金持ち定年、貧乏定年』からの引用のようなのですが、こんな胡散臭い記事に引用されて、それでいいの?長尾さん、中島さん。
この記事はさすがに創作だと思う
私は、この手のネット記事を、なんでもかんでも創作認定するのは好きではないけれど、さすがに、この記事は創作だと思う。
ネット記事には色々な人が登場します。
- 今すぐ辞めても、絶対に資産が持つのは算数ができれば分かるのに、いちいちFPに相談する心配性。
- 明らかに収入よりも贅沢しまくっているのに、それを自覚せず、貯金が増えずに困っている無自覚浪費者。
こういうのは、創作のようにも思えるけど、なかには、ビックリするほどの心配性、驚くほどの無自覚浪費者も、この日本には存在するのじゃないかなと、必ずしも創作を疑ってはいませんでした。
でも、この記事はあまりにも突っ込み所が多すぎる。特に、次の二つの記述は明らかに矛盾しています。
- 「下野さんが住むのは、首都圏近郊、築20年の1LDKタワマンです」
- 「都心からは出たくないんです」
家賃とリタイア資金について
あと最後に。そもそもの話として、1500万くらいの臨時出費で崩れてしまうリタイア計画なら、家賃25万の家に住んではいけないのは、言うまでもありません。
この記事のような、あまりに嘘っぽいのはアレですけど、賃貸の家賃って、早期リタイア・定年リタイア問わず、年をとればとるほど厄介になってくる出費ですからね、なるべく現役時代に何とかしておくこと(持ち家か格安賃貸など)をオススメします。
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