50歳で早期退職し、セミリタイア!

私セイルは50歳で早期退職、セミリタイアしました!その思いを綴ります。

江戸川区の「ひきこもり実態調査」に疑問

 東京都江戸川区がひきこもり実態調査を行って「衝撃的な結果」が出たそうな。

東京・江戸川区、ひきこもり7919人 40~50代が目立つ(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

東京都江戸川区が2021年度に実施したひきこもりの実態調査で、ひきこもり当事者が区内に7919人いることが判明した。

 ヤフコメだと、「よく調査を行った!頑張った!」みたいに絶賛の嵐ですが、定義上「引きこもり」に該当する私が、この立場でこの調査結果を眺めると、色々と疑問点が出てくるんですよね。

 調査結果の全文は次のサイトにて

www.city.edogawa.tokyo.jp

目次


 《東京都青梅市:今はほとんど使われていないトンネル》

「ひきこもり」の定義が広すぎ問題

 そもそも、「ひきこもり」の定義が広すぎという問題があるのですよね。厚労省の定義だと、

「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人とほとんど交流せずに 6 か月以上続けて自宅にひきこもっている状態」

  これだけでも雑な定義だなぁと思うのに、江戸川区の場合、

本調査においては、「仕事や学校等に行かず、家族以外の人との交流をほとんどしない方」としています。厚生労働省の定義から期間の要件を除いているのでご留意ください。 

 と、さらに定義を広げる。期間の要件を除いているとありますが、それだけではなく、「自宅にひきこもっている」という条件もちゃっかり除いている。すると、学生と給与所得者以外、大抵の方が「ひきこもり」に該当してしまう訳ですよ。ただでさえ雑な定義を、さらに雑にしているのが江戸川区です。

 「仕事や学校等に行かず、家族以外の人との交流をほとんどしない」ということ、バリバリ会社や役所で働いている方々からは問題に見えるのかもしれない。

 でも、突き詰めて考えてみると、「家族以外との交流がほとんどない」というのは、ただの中立的な状態であり、一体、何を問題にしてこのような定義にしているのか分からないんですよね。

 具体的に、生活に困っているとか、深刻な家庭内対立があるとかを考慮せずに、このような雑な定義をしてしまうのは、結局、「非『ひきこもり』者側からの偏見」に基づいており、また、その偏見を社会的により助長していくものだと思うんですよね。

 

 ヤフコメに興味深い投稿がありました。

私は江戸川区民です。この調査結果は信用できません。
昨年、江戸川区の調査員と名乗る人が訪問してきました。
話を聞くと、引きこもり調査だと言っていました。
あなたは所得がないですよね?引きこもりでは?と突然言われて正直腹が立ってしまいました。
子ども3人の育児中、下2人はまだ未就学児、幼稚園にも入れない年齢。
求職希望で保育園に希望を出すも落ちました。
なので働くことはできず、それでも毎日3時間以上は公園に連れて行き買い物したりして外出しています。
それなのに収入がないだけで引きこもり認定されてしまいました。夫の扶養に入っていますし子どもがいる事も分かるはずだと思うのですが…
子育て中と説明したのに、引きこもりから脱出する方法が書いてあるパンフレットを渡されました。
本当に引きこもりで悩んでる人がこんなパンフレットで改善されるとでも思ってるのか。
江戸川区民になったことを後悔しました。

 この方の怒りは分かりますが、厚労省江戸川区の定義としては、あなたも「ひきこもり」なんですよ。

 とにかく、一人でも多く「ひきこもり」のレッテルを貼って点数稼ぎしている実態が、このコメントから見えてきます。

 家族以外の交流が稀薄ってだけで、一緒くたにして、ひきこもりにカウントしていくなら、「そりゃ、そのくらい『ひきこもり』がいても、何の不思議も無いだろ」と思います。

所得があっても給与所得以外なら、ひきこもり調査対象

 もっとも、今回のひきこもり調査から除外されている人もいます。それは、幼少者や、もともとひきこもり認定されていた人などを除くと、「給与所得者」です。

 逆に言えば、資産からの所得だったり、事業所得などがあって、生活に何の支障が無かったとしても、それが給与所得でなければ、ひきこもり調査対象。さらに、人との接触が少なければ、あなたは立派なひきこもりであり、何かしら問題を抱えている人と見なされます。

 給与所得者といえば、大半は会社員か公務員。そして、いきなり「給与所得者とそれ以外」というカテゴリー分けを、社会正義としてナチュラルに行ってしまうところに、このアンケートを企画した方の発想が垣間見えてしまいますよね

別に今のままで満足な「ひきこもり」が3分の1

 「ひきこもり当事者の声」として、いくつか質問がなされているんですが、その中でも特に興味深い質問。

2-1 ひきこもり当事者が求めているもの

 「何も必要ない、今のままで良い」が32%と、3分の1もある。つまり、当人や周囲が納得ずくで、そのようなライフスタイルを自ら択びとっている人々が相当数混じっていることが伺える数字です。

 ついでにいえば、その他の項目、例えば「友だちや仲間づくり」とか「趣味活動ができる場所」「アルバイトや働き場所の紹介」なども、その深刻さ度合はそれぞれだと思います。

 確かに、テレビで放映されているような深刻なケースもあるでしょう。でも「一人で家にいると飽きるし、小遣い稼ぎにちょっとバイトしたいな」くらいの、ライトなケースもあるでしょう(実際、その手の記事がリタイアブログで多く見つかります)。

 また、「友だち」「趣味」なども、別に、ひきこもり限定の問題ではなく、給与所得者だって、そのような要求を持つことは当然あります。

 そのような個々のケースの深刻さの度合が、このアンケートからは見えてきません。ただ一つ分かるのは「いわゆる『ひきこもり』生活に満足している人々も、実は相当数いる」ということぐらいです。

センセーショナルに取り上げることが本当に良いことなのか?

 別に私は、「ひきこもりなど大した問題じゃないからほっとけ」と言いたい訳ではありません。むしろその逆。本当に深刻なケースについては、しっかり国や自治体として対応すべき、と思っています。

 だからこそ、「ひきこもり」というものを、センセーショナルに取り上げることが本当に良いことなのか?と感じます。

 「君みたいな人が江戸川区で分かっているだけで7919人もいるんだから、そんなに気に病むことは無いんだよ」的な話なら良いんだけど、そうではない。江戸川区長自身の話も報道でも「7919人もいる!何とかしなきゃ!」というトーン。定義をどんどん広げて、マッチポンプ的に騒ぐ、ということが、現に深刻な状況に陥っている方々を、かえって追い詰めてしまう結果になるような気が。

 江戸川区の資料には

誰もが生きづらさを抱え孤立に陥る可能性を持つ社会の中で、

とありますが、むしろ、あなたたちが生きづらさを助長している側面があるんじゃないの?

 例えば、先に述べた、「給与所得者(≒会社員/公務員)とそれ以外」といきなりカテゴリー分けされてしまう、そのこと自体に、生きづらさを感じるね。「毎日、規則正しく職場に通って給料を得る」的なスタイルを過度に標準化し、それ以外の在り方を、ほぼ一律に「ひきこもり」として問題視するという。

 実際、深刻な状況に陥っている方も、結局は、そのような標準スタイルになじめない、ということなんじゃないかな。そして、江戸川区は、そのような方に対し、「標準スタイルを採用しないことに対する偏見」をあらわにし、「標準スタイルを採用するよう矯正すること」を目指している(ように見える)。

 私は、生活の見通しが立っているから、その程度のことはどってことないけど、もっと深刻なケースについて、問題は解決するんでしょうか? 疑問を持たざるを得ないのです。

 

★初めてお越しの方へ。以下にて私のセミリタイアの概要をまとめてあります。
 ⇒50歳でセミリタイア達成!その概要を書きます