名もなき相撲力士の引退、その人生に切なさを感じる
今日から大相撲9月場所。
相撲界は完全なピラミッド社会で、番付上位力士だと、昇進にしろ陥落にしろ引退にしろ、華々しく扱われるのですが、下位の力士の情報はほとんど表に出てきません。
しかし、そんな地味な力士であっても、最近はその情報をインターネットで閲覧できるようになったので便利になりました。
先ほど、ネットを見ていたら、たまたま引退力士の情報が載っていました。
降下の勢は東十両筆頭、千代丸は西十両3/新番付(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース
【引退】
希善龍、寺尾、青狼、徳真鵬、豪頂山、荒虎、白虎、旭勇幸、倉橋、駒木龍、勝武士(死去)、阿光、萬國、琴陸山、栄富士、照道、貴正樹、龍雅、峰雲、旭勝力、若青雲、山川
全然知らない人ばかり、まさに名もなき力士ですが、何人かググってみたら、色々と情報が出てきて、その人生模様に切なさを感じました。
新型コロナで亡くなった勝武士さんは結構報道されたので、他の人について書いてみたいと思います。
目次
《東京都青梅市/埼玉県飯能市:都県境》
希善龍(35歳、最高位:十両11枚目)
元十両の希善龍さんは、引退場所こそ幕下でしたが、何場所か十両で取っているので、しっかりとした記事にまとまっています。
「まだまげを切っていないので不思議な感じ。次の場所の番付を気にしない安心感はありますね。今はホッとしています」
この気持ちは分かる。私も退職前、後任者への引継を概ね終えて、年休消化に入ったら、それまで心身にかかっていた重圧から解放され、何よりも「ホッとした」というのが偽らざる気持ちでした。
私なぞはそれでも毎月の給料は保証されていましたが、この方は、十両(年収約1700万円:付き人がつく)と幕下(年収約100万円:付き人になる)を9度も往復していたので、そのプレッシャーは相当なものがあったでしょう。
それでも、十両になれたというだけでも随分すごいことで、「十両に上がれずに辞めていった人もいる」と前向き。
引退後は、地元の香川県に戻るそうで、
今後の仕事は正式に決まっていないが、仕事がない日は小学校の同級生が同市に開いた相撲クラブで小、中学生を指導する予定。
旭勇幸(26歳、最高位:幕下58枚目)
旭勇幸さんは、最高位は幕下だが力士人生の大半は三段目。しかし、地元・川崎の地域情報紙がかなり取り上げているので、結構、情報がアップされています。
先日、親方の不祥事が発覚して部屋が閉鎖になったので、引退はその関連みたいに書いてある記事もありましたが、昨年、幕下の昇進場所で怪我を負ってから休場がちであり、自らの限界を悟っての引退というのが事実に近そうです。
断髪式は7月12日に同部屋(当時)で行われ、15人超の関係者がまげに、はさみを入れた。「もう力士をやめるんだ」。はさみが入るたびにそんな実感がわいたという濱上さん。次第に涙が止まらなくらなくなった。最後となる止めばさみは、中川親方が行った。「よく頑張った」。師匠にかけられたこの言葉で「全てが報われた」と実感した。
(略)
5月下旬、引退を決意し師匠に伝えると、親方は数秒間の沈黙の後「そうか。ケガも多かったからな。お前が決めたことだ。俺は止められない」と語った。おかみさんは涙したという。
26歳という若さで、このような形で引退を決意せざるを得なかった、というのは本当に悲痛なことです。
断髪式も、部屋で行われる寂しいもの。いくら幕下以下とはいえ、通常なら、場所後の打上げなど賑やかな場所でやるのでしょうが、恐らく新型コロナウィルス感染防止のため、ヒッソリと行われたのでしょう。
第2の人生は、建設会社で働く。まずは体を治し、現役時代135kgあった体重を100kgへ落とすことを目標にする。断髪式では、向の丘工業高校の清田英彦監督から「指導者として今後うち(向工)でやってほしい」とも伝えられた。
幕下まで上がれば、高校での指導者くらいは務まるのかもしれませんね。頑張って頂きたいところです。
貴正樹(20歳、最高位:序二段21枚目)、若星雲(19歳、最高位:序二段56枚目)
貴正樹さんは、そのしこ名から分かる通り、旧:貴乃花部屋の出身。貴乃花親方最後の弟子であり、親方から「この子は強くなる」と直々に太鼓判。
貴乃花部屋 最後の弟子。貴 正樹|貴乃花応援会《Pando》
この子は強くなります。
信念が只者ではない子です。
しかしその後は、勝ち越しよりも負け越しの方が多く、三段目にも上がれずに、3年足らずで引退。強くなるどころか、かすってもいないというのが正直なところ。
また1力士、貴乃花最後の弟子が喘息もあり大阪の両親と生活がしたいと先月に引退しました❗😢
— 🐤🐸Osamu🐸🎶🐣💞🦐🐭 (@sam036osamu) 2020年6月30日
新たな人生を切り開いて行って欲しいです。#貴正樹
元貴乃花親方最後の弟子貴正樹「貴の字変えません」 https://t.co/uzsztmEEq8
一方、若星雲さんも、同じく最高位序二段。
改めて新弟子、若青雲の紹介です。
— 千賀ノ浦部屋 (@chiganoura_beya) 2017年3月25日
本名、佐藤 順平(さとう じゅんぺい)
平成13年4月18日生まれ
愛知県名古屋市出身
181cm 113kg
特技は柔道(初段)。
相撲経験はありませんが親孝行がしたくて入門を決めました。
挫折しないように頑張ります!#sumo pic.twitter.com/L3QOlHExEI
泣かせることに、力士になったのは、親孝行がしたかったのだそうな。柔道初段はそれなりに期待の持てるキャリアな気もしますが、やはり厳しい世界なのでしょうか。見て下さい、この希望に満ちた笑顔。
こういう風に序二段くらいでやめていく若者は多いのだろうけど、この二人は入門時のエピソードが印象深いだけに、力尽きて引退する切なさもまたひとしおなのです。
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