早期・セミリタイアの方には少なそうですが、定年リタイアの方には、現役時代の性癖が抜けず、困り者になってしまうケースがあるみたいです。それが次の記事。
目次
《東京都八王子市:裏高尾方面》
現役時代の役職の感覚で、横柄な態度をとってしまう
上のリンク先は、次の書籍の紹介記事です。
この記事・書籍には定年退職後、困り者になってしまった方々のエピソードが出てきます。
元部長が再就職できないのは、まず、年収1000万円以下の会社は就職先として目に入っていなかったから。また、どうやら彼は、昔の肩書を鼻にかけ、上から目線の態度を常にとっているらしい。そんな性格では、いくら優秀でも欲しがる会社はない、ということだった。
製薬会社で営業本部長を務め、定年の4年前に早期退職した現在61歳の男性は、以前よりイライラすることが増えた。(略)イライラはエスカレートし、店員の手際が良くても対応に温かみがないと感じただけで、コールセンターにクレームを入れたり、「責任者を呼べ!」と騒ぎを起こしたりするようになった。
別の記事には、次のような例もありました。
定年退職後の「家庭内管理職」夫が社会問題化…家族に指図&激高、心身を壊す妻も
定年退職後も「会社で偉かった自分」を忘れられず、家庭内で上司のように振る舞い、家族に偉そうに命令し、ついには家族に愛想を尽かされる「家庭内管理職」が注目を浴びている。
何れも共通しているのは、現役時代にそれなりの役職についていた方が、定年退職後、上司的な感覚で横柄な態度をとってしまう、ということです。
彼らは、既に会社を退職して肩書が剥がれていてる。一方で、相手は在職時の元部下ではない人達。つまり自分の側も相手の側にも上司として命令する根拠が全くないのに、上司のように振る舞ってしまうのです。
キーワードは「承認欲求」
これらのケースで共通しているキーワードが「承認欲求」。
著者は、この男性について「働いていたときのように権威が通用しないことで承認欲求が満たされず、問題行動につながった」と分析している。
定年退職後の「家庭内管理職」夫が社会問題化…家族に指図&激高、心身を壊す妻も
自己愛が人一倍強い人は「認められたい」という承認欲求も強いので、定年退職して「会社という偉そうにできる場」がなくなると、満たされない思いにさいなまれる。そのため、家庭内で承認欲求を満たそうとするわけだ。
会社である程度偉くなった人の多くは、会社に行くだけで自動的に承認欲求を満たせていたんだと思います。部下たちから、無条件に尊重(尊敬ではない)されていたのですから。
でも、上司が「承認欲求」を満たせていることと、実際に部下が上司を「承認」していることとは、必ずしもイコールではないことに注意。
部下が上司を尊重するのは、その立場に由来するものです。部下は、上司のことを内心承認していなくとも、その組織に属して給料をもらっている以上、尊重はしなくてはいけないのです。それが立場というもの。面従腹背ってヤツです。
だから会社という組織においては、承認されていなくても、自動的に承認欲求を満たせてしまうという、不思議なことが起こり得るのです。
そのような形で承認欲求を満たすことに慣れ切ってしまった人が定年退職すると、どうなるのでしょうか。
もはや在職時の部下はいません。接する相手は、求職する会社の人だったり、店員だったり、家族だったり。彼らからは無条件に尊重を得ることができないのです。なぜならば「ただの人」になってしまったのですから。
定年退職者もそのことは頭では分かっている。
でも一部、分かってはいるけれど、承認欲求を満たせないと耐えられないという人が存在する。
そういう人は、求職相手や店員や家族などに対して、デカい態度で臨むことを自制することができずに、顰蹙を買ってしまう。
実は承認欲求にも2つのレベルがある
かなり有名になった、承認欲求という言葉、以前とりあげたマズローの欲求5段階説にも出て来ますね(感染は恐い!でも経済は回す!の不条理、心理学で考えてみた参照)。
で、wikipediaによると、この承認欲求には2つのレベルがあるらしいです(太字:セイル)。
承認(尊重)の欲求 (Esteem)
(略)
低いレベルの尊重欲求は、他者からの尊敬、地位への渇望、名声、利権、注目などを得ることによって満たすことができる。
(略)
高いレベルの尊重欲求は、自己尊重感、技術や能力の習得、自己信頼感、自立性などを得ることで満たされ、他人からの評価よりも、自分自身の評価が重視される。
一般に言われる「承認欲求」って、実は「低いレベルの尊重欲求」の方ですよね。キーワードは「他者」。要するに、他者からチヤホヤされたい、という欲求。
先の記事にあった定年退職者達が満たそうとしているのも「低いレベルの尊重欲求」です。でも、退職して無職になると、これを満たすのはなかなか難しくなりますよね。
だとすると、勝負は「高いレベルの尊重欲求」を満たせるかにかかってきます。キーワードは「自分」。「自分はなかなか上手くやっているな」と自分で承認できるか。
それは、これまでの自分如何にかかっています。部下がお膳立てしてくれるわけではないから、頼りになるのは、自分のあり方のみなのです。
長年、部下から無条件に尊重されることによって、自動的に承認欲求を満たすことに慣れ切ってしまった人には、難しいことなのかもしれません。
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