前回(何かを失う覚悟がなければセミリタイアなどできない)の続きをやります。
目次
《東京都あきる野市》
右肩下がりの局面到来
多くの人は、いつか右肩下がりになる
前回の投稿(何かを失う覚悟がなければセミリタイアなどできない )では、1億3000万円あっても、取り崩すのが怖く、リタイア生活に入るのに躊躇するという記事を紹介しました。
また、この相談者を分析した記事もあり(【まだ足りない?】1億円あっても不安でセミリタイアできない3つの理由)、そこには次の記載があります。
>右肩下がりで減り続けるのが怖い
>減り続ける資産を眺めるのは、気持ちが良いものではないでしょう。
>対策(1):資産は原則取り崩さない
つまり、「右肩下がりになるのは恐い、だからそうならないようにしよう」という論調です。
でも私はむしろ、「人生いつかは右肩下がりになる局面が来るものだ」ということ、そして「そのときが来たら、軟着陸できるようにしておこう」ということを主張しようと思っています。
そういえば、これまで私は「40代」や「中年の危機」ネタで、次のような記事を投稿しています。
特に真ん中の、中年の危機 ~40代の悲哀を考える~については、何ヶ月も前の記事なのに、いまだに一定のアクセスがあります。それだけ関心が深いテーマなのでしょう。
そして、これらの投稿で書いていることも結局同じで、(一部の恵まれた人を除けば)40代ぐらいになったら横ばいになり、更には右肩下がりの局面に入ってくる、ということです。
そのときまでは、右肩上がりが永遠に続くかのように錯覚する
実際、多くの人にとって、それは避けることができないこと。
自分の能力だったり、気力だったり、体力だったり、運だったり。あるいは職場の状況だったり、社会情勢だったり。どれか一つでも停滞すれば、それまでの右肩上がりや現状維持を阻害する要因になり得る。今回のコロナでもね。
でもそれは、そのときが来るまでは気にもかけないもの。だから、これまでの右肩上がりが永遠に続くかのように錯覚してしまう。
先の分析記事を執筆された方は、プロフィールなどを見る限り、まだ30代。上手に投資して「金の卵を産む鶏」を飼っていらっしゃって、「5年間まったくストレスなく」やれているそうです。
だからなのか、死ぬまで同じ方法で配当金をもらい続け、資産を取り崩さないでいられるのだと確信していらっしゃいます。
でも、本当に思惑通りにいくものなのでしょうか。それは、この人が死ぬときになってみないと分かりません。「これまでの5年間、まったくストレスなくやれていること」が、「今後死ぬまで何十年もの間、資産を取り崩さないでいられる」ことを直接保証するものではないからです。
一時はタイトルを独占した羽生九段でさえ、今は無冠です。
右肩下がりの局面にあたって
右肩下がりを受け入れる
右肩下がりと一口に言いますが、単に資産のことに留まらず、自分の体力・気力なども、人生半ばを過ぎれば、色々なことが右肩下がりになってきます。人生の残り時間は生まれたときから右肩下がりですが、このことを意識するときもやってきます。
このような種々の右肩下がりがあるなかで、資産のことばかり殊更に着目し、肩ひじ張ることもありません。人生のある時期を迎えたら、むしろ、右肩下がりを積極的に受け入れて、軟着陸する方向に気持ちを切り替えた方がよいと思うのです。
リタイアはその一つの手段
早期リタイアやセミリタイアというのは、その一つの手段。
もちろん、右肩下がりのスピードが大き過ぎて、短期間でマイナスに至るようなことでは問題ですよ。でも、初期値に対して右肩下がりのスピードが緩やかなのであれば、そこまで怖がることはない。
資金面の右肩下がりのスピードは緩やかにすることなら、簡単なバイトや、生活を少し見直すことでどうにかなります。
(右肩下がりを取り戻そうと投資するのは慎重にしたがよいと思う。あれは右肩上がりの局面でやるからこそリスクがとれる)。
右肩下がりが充分に緩やかになれば、そのまま軟着陸が可能です。
そして、生み出された自分の時間を、自分のために活用することに注げば、気力や楽しみの面においては、むしろ右肩上がりにもっていくことも可能かもしれません。
資産額をゲームの得点のように捉えることから脱却
資産のことを気にすれば気にするほど、ゲームの得点のようにバーチャルなものと化していく。ゲームの得点だと思うから、それまで積み上げてきた高得点を減らすことを受け入れがたく感じてしまう。
でも本当は、資産はゲームの得点ではなく、人生を楽しむために有効活用するためのもの。そのためには、資産額を保とうと、過度に神経を擦り減らすことからは脱却した方がよいのではないでしょうか。
金の卵ばかり食べていても、決して鶏は食べられません。
コップから溢れたしずくをいくら舐めたところで、喉の渇きを癒すには全く足りません。
死ぬまで鶏肉もコップの水も飲まず、卵やしずくで我慢するつもりなのでしょうか?
先の相談者について
最後に、1億3000万円あってもリタイアできないという、冒頭記事に戻ります。
私は、あの相談者の方、本稿で書いたようなこと、実は分かっていらっしゃるのだと思います。つまり、資産面での右肩下がりを受け入れて、第二の人生を歩もうとされているということ。
もし、この方が「右肩下がりじゃ嫌だ、一銭も取り崩したくない」と思っているのなら、深野康彦氏の記事なぞを読破したり、ましてや相談などするはずがないからです。深野氏の記事では、資産取り崩しが原則であり、リスク資産を積極的に提案することは無いのですから。
この相談者、51歳。奥さんは49歳。夫婦揃ってのリタイア希望年齢は50代前半。この10年間、奥さんには色々と我慢をしてもらってきたそうです。資産で高得点を積み上げるのはもういいから、背負ってきた荷物をそろそろ下したい。
そんなところなのでしょうか。
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